猛暑の夏バテと歯周病 ―― 唾液の減少と体力低下が歯ぐきに与える影響、今日からできる口腔ケア

猛暑の夏バテと歯周病 ―― 唾液の減少と体力低下が歯ぐきに与える影響、今日からできる口腔ケア

今年も本格的な猛暑がやってきました。エアコンの効いた部屋にいても、なんとなく体がだるい。食欲がわかず、そうめんやアイスコーヒーで済ませてしまう日が続く。夜も寝苦しくて、疲れが抜けない――そんな夏バテの入り口に立っている方も多いのではないでしょうか。

実はこの「夏バテ」、お口の中にも確実に影響を及ぼしています。とくに歯ぐき、つまり歯周組織は、体力や免疫の状態を映す鏡のような場所です。夏に歯ぐきが腫れた、歯が浮くような感じがする、口の中がネバつく――こうした変化には、はっきりとした理由があります。

夏に口のトラブルが増える背景には、次の3つの流れがあります。

  • 猛暑による脱水と自律神経の乱れが唾液の分泌を減らし、唾液の「洗い流す・菌を抑える」働きが落ちることで、むし歯と歯周病の両方が進みやすくなる
  • 夏バテによる食欲低下は、たんぱく質やビタミンの不足を招き、歯ぐきの抵抗力そのものを下げてしまう。加齢による体力低下があると、この影響はさらに大きくなる
  • 対策の柱は「水をこまめに飲む」「甘い飲み物をちびちび飲まない」「疲れていても夜のケアだけは省かない」の3つ。加えて、症状が出る前の定期的な歯科受診が最も確実な防御になる

以下では、この仕組みを順に見たうえで、今日の夕方から実践できるケアの手順まで具体的にお伝えします。年齢を重ねた方とそのご家族がとくに注意すべき点も、あわせて整理します。

なぜ猛暑で口のトラブルが増えるのか ―― 鍵を握るのは「唾液」

夏に口のトラブルが増える最大の理由は、唾液の分泌量が減ることにあります。

唾液は単なる水分ではありません。厚生労働省の運営する健康情報サイト「e-ヘルスネット」でも、唾液には口の中の汚れを洗い流す自浄作用、細菌の増殖を抑える抗菌作用、粘膜を保護し食べ物を飲み込みやすくする働きがあり、唾液が減るとむし歯や歯周病のリスクが高まると説明されています。

つまり唾液は、24時間休みなく働き続けている「天然の洗浄液」であり「防御システム」です。この分泌量が落ちるということは、口の中の防御力が下がることを意味します。

唾液が担っている主な働き

  1. 自浄作用 ―― 食べかすや細菌を洗い流し、口の中を物理的にきれいに保つ
  2. 抗菌作用 ―― 細菌の増殖を抑える成分を含み、感染から粘膜を守る
  3. 緩衝作用 ―― 飲食で酸性に傾いた口の中を中性に戻し、歯が溶けるのを防ぐ
  4. 再石灰化の補助 ―― 唾液中のカルシウムやリンが、ごく初期の脱灰した歯を修復する
  5. 粘膜の保護と嚥下の補助 ―― 粘膜を潤して傷つきにくくし、食べ物をまとめて飲み込みやすくする

これだけの役割を担っているため、唾液が減ると口の中の環境は一気に悪化します。夏に「口の中がネバつく」「朝起きたとき口がカラカラ」と感じるのは、この防御システムが弱っているサインだと考えてください。

夏に唾液が減る3つの経路

猛暑期に唾液が減るのには、次の3つの経路があります。それぞれ対策が異なるため、自分がどれに当てはまるかを知っておくと役に立ちます。

1. 脱水による絶対量の不足

唾液のもとは血液中の水分です。汗をかいて体内の水分が減れば、体は生命維持を優先し、唾液の分泌を後回しにします。屋外で作業をされる方はもちろん、室内にいても、エアコンの除湿によって知らないうちに水分は失われています。

2. 自律神経の乱れによる分泌調節の不調

唾液の分泌は自律神経がコントロールしています。猛暑による寝苦しさ、屋外と室内の激しい温度差、疲労の蓄積は自律神経のバランスを崩し、唾液が出にくい状態をつくります。夏バテそのものが、唾液減少の原因になっているわけです。

3. 口呼吸の増加

暑さや鼻づまり、マスクの着用などで口呼吸が増えると、口の中の水分が蒸発しやすくなります。とくに就寝中の口呼吸は、朝の強い口臭やネバつき、歯ぐきの腫れに直結します。

夏バテの「食べ方・飲み方」が歯を蝕む ―― 見落とされがちな落とし穴

夏バテのときの食べ方と飲み方は、それ自体がむし歯と歯周病のリスクを高めます。

暑さで食欲が落ちると、食事は自然と冷たいもの、のどごしのよいもの、甘いものに偏ります。そして水分補給の名目で、糖分を含む飲み物を一日中口にすることになります。この2つが重なると、口の中は非常に不利な状態に置かれます。

スポーツドリンクの「ちびちび飲み」が最も危険

熱中症対策としてスポーツドリンクや経口補水液を持ち歩くのは、体を守るうえで理にかなった行動です。問題は飲み方にあります。

歯は、口の中が酸性に傾くと表面のミネラルが溶け出します(脱灰)。通常は唾液の緩衝作用によって中性に戻り、溶け出したミネラルが戻ってきます(再石灰化)。この綱引きで再石灰化が勝っていれば、歯は守られます。

ところが、糖分と酸を含む飲み物を少しずつ何度も口にすると、口の中が酸性のままになり、中性に戻る時間が確保できません。脱灰だけが延々と続く状態です。しかも夏は唾液が減っているため、緩衝作用そのものが弱まっています。「熱中症対策のつもりが、歯にとっては最も厳しい条件だった」ということが起こり得ます。

対策はシンプルです。

  • 日常的な水分補給は、水または無糖のお茶を基本にする
  • スポーツドリンクや経口補水液は、大量に汗をかいたときや体調不良時など、必要な場面に限定する
  • 飲むときは「ちびちび」ではなく、ある程度まとめて飲み、その後に水で口をすすぐ
  • 就寝前に糖分を含む飲み物を飲んだまま眠らない

なお、熱中症の危険がある場面では、水分と塩分の補給が最優先です。歯のことを心配して必要な補給を控えるのは本末転倒ですので、飲み方の工夫で両立させてください。

麺類中心の食事が招く「見えない栄養不足」

食欲がないときの、そうめん、冷やし中華、アイスクリーム。のどごしはよいのですが、栄養面では炭水化物に大きく偏ります。

歯ぐきはコラーゲンを主体とした組織で、その材料はたんぱく質とビタミンCです。傷んだ組織を修復し、細菌と戦う免疫細胞を作るのにも、たんぱく質は欠かせません。夏バテで肉・魚・卵・大豆製品の摂取が減ると、歯ぐきは「材料不足」のまま細菌と戦うことになります。

e-ヘルスネットでも、歯の喪失や咀嚼能力の低下によって食べられる食品が限られると、ビタミン、ミネラル、たんぱく質、食物繊維が不足しやすくなり、逆に炭水化物や塩分の摂取が増える傾向があると指摘されています。夏バテによる食事の偏りは、これと同じ構図を一時的につくり出しているといえます。

冷たい麺に、ゆで卵、ツナ、豆腐、しらす、蒸し鶏などを一品加えるだけでも、状況はかなり変わります。無理に品数を増やすのではなく、今食べているものに「たんぱく質を一つ足す」と考えると続けやすいはずです。

疲れて歯みがきを省く夜が、最も危険な夜

夏バテの時期に多いのが、「疲れて歯をみがかずに寝てしまった」という日が増えることです。

就寝中は唾液の分泌が一日で最も少なくなります。夏はもともと唾液が減っているところに、就寝中のさらなる減少が重なります。この時間帯に糖分と歯垢が残っていれば、細菌にとっては理想的な環境です。歯ぐきの炎症は、こうした夜が数日続いただけでも悪化することがあります。

どうしても気力がわかない日は、完璧を目指さなくて構いません。歯ブラシで全体を1分でも動かす、それも難しければ洗口液で口をすすぐ。ゼロと少しでは大きな差があります。

年齢とともに歯周病が進みやすくなる理由 ―― 体力低下と免疫のはなし

歯周病は加齢とともに確実に増えます。そして体力の低下は、その進行を後押しします。

ここが今回のテーマの核心です。若い方にとって夏バテは「一時的な不調」で済むことが多いのですが、年齢を重ねた方の場合、夏の消耗が歯周組織に残す影響はより大きくなります。

データで見る、年齢と歯周病の関係

厚生労働省が実施している歯科疾患実態調査は、日本人の歯と口の状態を把握するための代表的な統計です。令和6年(2024年)調査の結果概要は令和7年6月26日に公表されました。

明るい話題としては、80歳で20本以上の歯を持つ人の割合、いわゆる「8020達成者」が61.5%となり、前回の令和4年調査の51.6%から大きく増えました。過去1年間に歯科検診を受けた人の割合も63.8%と、前回の58.0%から増加しています。予防の意識が着実に広がっている結果といえます。

一方で、歯周病の状況には注意が必要です。同じ調査では、歯周病の指標となる4mm以上の歯周ポケットを持つ人の割合が、55歳以上のすべての年齢層で50%を超えています。つまり、55歳を過ぎると2人に1人以上が歯周病の所見を持っているということです。歯ぐきからの出血を認める人の割合も、高齢の年齢層ほど高くなる傾向が示されています。

歯を残せる人が増えている一方で、その残った歯を支える歯ぐきは、年齢とともに厳しい状況に置かれている。これが現在の日本人の口腔の姿です。

「体力が落ちる」と歯ぐきに何が起きるのか

歯周病は、歯周ポケットに入り込んだ細菌が炎症を起こし、進行すると歯を支える骨(歯槽骨)を溶かしていく病気です。ここで重要なのは、歯周病が「細菌の力」と「体の抵抗力」のせめぎ合いで進む病気だという点です。

細菌の量が同じでも、体の抵抗力が落ちれば炎症は拡大します。夏バテによる睡眠不足、栄養の偏り、疲労の蓄積は、いずれもこの抵抗力を下げる方向に働きます。

さらに加齢そのものが、免疫機能の緩やかな低下と組織の修復力の低下をもたらします。若い頃なら数日で治まった歯ぐきの腫れが、年齢を重ねると長引く。夏を越えるたびに少しずつ悪化していく。こうした経過は、決して珍しいものではありません。

e-ヘルスネットでは、歯周病のリスク因子として喫煙と糖尿病が挙げられており、喫煙者は非喫煙者と比べて歯周病に3倍以上かかりやすいこと、糖尿病のある方は歯周病が進行しやすいことが示されています。夏バテによる一時的な抵抗力の低下は、これらの背景を持つ方にとってはとくに大きな意味を持ちます。

高齢の方に多い「気づかない脱水」と「薬による口の渇き」

年齢を重ねた方には、夏の口腔乾燥に関して固有のリスクが2つあります。

のどの渇きを感じにくくなる

加齢により口渇感が鈍くなるため、体が水分を必要としていても自覚しにくくなります。「のどが渇いていないから大丈夫」という判断が当てにならなくなるのです。時間を決めて飲む習慣に切り替えることが有効です。

服用中の薬の影響

血圧の薬、利尿薬、睡眠薬、抗アレルギー薬、精神科の薬など、口の渇きを副作用として持つ薬は少なくありません。複数の薬を服用している場合、その影響は重なります。

夏場に急に口の渇きが強くなった場合、猛暑の影響なのか薬の影響なのかは自己判断が難しいところです。歯科を受診する際にはお薬手帳を持参し、服用中の薬を歯科医師に伝えてください。薬の変更が必要かどうかは処方した医師の判断になりますが、口腔内の症状を正確に把握することは、その判断材料になります。なお、自己判断で薬の量を減らしたり中止したりすることは避けてください。

歯周病は口だけの問題ではない ―― 全身との双方向の関係

歯周病は、全身の健康状態と相互に影響し合っています。

この点は近年とくに研究が進んでいる領域で、「歯の問題」として片づけられない理由がここにあります。

糖尿病との深い関係

e-ヘルスネットでは、歯周病と糖尿病の関連はエビデンスが高いものとして知られており、両者には双方向の関係があると説明されています。糖尿病があると免疫機能の低下により歯周病が悪化しやすくなる一方で、歯周治療によって血糖コントロールの指標であるHbA1cの改善が報告されており、日本歯周病学会と日本糖尿病学会の両学会が糖尿病患者への歯周治療を推奨しています。

また同ページでは、歯周病が心疾患、慢性腎臓病、呼吸器疾患、骨粗鬆症、関節リウマチ、悪性新生物、早産・低体重児出産など、さまざまな全身疾患と関連することが報告されているとされています。

夏バテで食事が乱れると血糖のコントロールも乱れやすくなります。糖尿病をお持ちの方にとって、夏の口腔ケアは血糖管理の一部でもあると考えてください。

オーラルフレイルという視点

高齢期の口の機能低下は「オーラルフレイル」と呼ばれ、近年注目されています。

e-ヘルスネットでは、口の機能の衰えが栄養状態、フレイル、サルコペニア、認知機能低下、医療・介護費の増大と関連することが報告されており、大規模研究においてオーラルフレイルに該当する高齢者は、身体的フレイル、サルコペニア、要介護状態、さらには死亡のリスクが2倍以上高いことが示されていると説明されています。噛む刺激が脳血流を増加させ、記憶や判断の機能を高めることにも触れられています。

夏バテで食が細くなり、やわらかいものばかり食べる期間が長引くと、噛む力は落ちていきます。そして噛む力が落ちるとさらに食べられるものが減る。この悪循環は、夏をきっかけに始まることが少なくありません。「夏だから仕方ない」で済ませず、秋には元の食事に戻せているかどうかを意識してください。

夏に増える「急に痛くなる」トラブルへの備え

夏は、慢性的だった歯や歯ぐきの問題が急性化しやすい季節です。

抵抗力が落ちているところに細菌の勢いが増すため、これまで症状のなかった部位が急に腫れたり痛んだりします。とくに以下のような症状には注意してください。

  1. 歯ぐきが腫れて、ズキズキと拍動するように痛む ―― 歯周組織に膿がたまっている可能性があります
  2. 奥歯のさらに奥が腫れて口が開けにくい ―― 親知らずの周囲の炎症が疑われます
  3. 頬や顎の下まで腫れが広がる、熱が出る ―― 炎症が周囲に及んでいる可能性があり、早急な受診が必要です
  4. 歯が浮く感じ、噛むと痛い ―― 歯を支える組織の炎症が急性化しているサインです

痛み止めで一時的に症状が抑えられても、原因が消えたわけではありません。とくに腫れと発熱を伴う場合は、様子を見ずに受診してください。

また、お盆の時期は多くの歯科医院が休診となります。夏休みやお盆に入る前に、気になっている部分を診てもらっておくことが、結果的に最も確実な備えになります。「もう少し様子を見よう」と思っていた箇所がある方は、休診期間に入る前の受診をおすすめします。

今日からできる、猛暑期の口腔ケア7つの実践

ここまでの内容を、実際の行動に落とし込みます。

1. 時間を決めて水を飲む

のどの渇きを待たず、起床時、午前中、昼食時、午後、夕方、入浴前後、就寝前というように、タイミングを決めて水またはお茶を飲みます。唾液の材料を切らさないことが、すべての土台です。

2. 糖分を含む飲み物は「回数」を減らす

総量より回数が問題です。ちびちび飲みをやめ、飲んだあとは水で口をすすぐ習慣をつけます。

3. 夜のケアだけは死守する

一日のうちで最も重要なのは就寝前です。疲れている日ほど、ここを省かないでください。歯ブラシに加え、歯と歯の間を清掃する用具(デンタルフロスや歯間ブラシ)を併用すると、歯周病の原因となる歯垢を効率よく除去できます。

4. たんぱく質を一品足す

冷たい麺類に、卵、豆腐、ツナ、蒸し鶏、しらすなどを一つ加えます。歯ぐきの材料を切らさないための、最も簡単な工夫です。

5. 唾液腺を刺激する

食事のときによく噛むこと、耳の下や顎の下を軽くマッサージすることで唾液の分泌が促されます。ガムを噛む場合は、むし歯のリスクを避けるため無糖のものを選んでください。

6. 口呼吸に気づく

朝起きたときに口が渇いている、のどが痛いという場合、就寝中の口呼吸が疑われます。鼻づまりがある場合は耳鼻科の受診も検討してください。

7. 症状が出る前に歯科で診てもらう

歯周病は初期に自覚症状がほとんどありません。痛みが出た時点では、すでに進行していることが大半です。歯科医院での定期的な検診と、歯科衛生士による専門的なクリーニングは、自宅のケアだけでは届かない部分を補います。

前述のとおり、令和6年の歯科疾患実態調査では過去1年間に歯科検診を受けた人が63.8%まで増えています。しばらく受診していない方は、この夏を区切りに検討されてはいかがでしょうか。

日立市で受けられる相談・支援

日立市には、歯と口の健康に関する公的な相談窓口があります。

日立市保健センター

  • 所在地:〒317-0065 茨城県日立市助川町1丁目15番15号
  • 電話:0294-21-3300
  • 担当課:日立市 保健福祉部 健康づくり推進課
  • 健康づくり推進課の受付時間:午前8時30分から午後5時15分(土曜・日曜・祝日を除く)

健康全般の相談窓口として、健康相談を実施しています。歯科に関する市の事業や健診についても、こちらが窓口となります。

日立市心身障害者歯科診療所

障害があり一般の歯科医院での受診が難しい方のための歯科診療所が、日立市に設置されています。ご家族の受診でお困りの場合は、日立市公式ウェブサイトの該当ページをご確認ください。

そのほかの市の歯科関連事業について

日立市では、歯と口の健康週間に合わせたイベントや、8020・6424推進月間のキャンペーンといった歯科の啓発事業が実施されてきました。ただし、これらは年度ごとに内容や日程が変わります。最新の実施状況、市の歯科健診の対象年齢や自己負担額については、日立市公式ウェブサイト(https://www.city.hitachi.lg.jp/)でご確認いただくか、健康づくり推進課へお問い合わせください。

休日や夜間に急な痛みが出たとき

お盆や休日に急な症状が出た場合の休日歯科診療については、日立市公式ウェブサイトおよび地域の歯科医師会の案内をご確認ください。受診前に電話で診療の可否を確認することをおすすめします。

よくある質問(FAQ)

Q1. 夏になると歯ぐきが腫れやすいのですが、気のせいでしょうか。

気のせいとは言い切れません。猛暑による脱水と自律神経の乱れで唾液が減ると、口の中の自浄作用と抗菌作用が低下します。そこに夏バテによる栄養の偏りと睡眠不足が重なると、体の抵抗力が落ち、歯ぐきの炎症が悪化しやすい条件がそろいます。毎年同じ時期に繰り返している場合は、季節的な要因だけでなく、もともと歯周病が進行している可能性もありますので、一度検査を受けることをおすすめします。

Q2. 熱中症対策のスポーツドリンクは、歯に悪いのでやめたほうがよいですか。

やめる必要はありません。優先すべきは熱中症の予防です。問題は「飲み方」で、少量を一日中口にし続けると、口の中が酸性の状態から回復する時間がなくなります。日常の水分補給は水や無糖のお茶を基本とし、スポーツドリンクは大量に汗をかいたときなど必要な場面に限定して、飲んだあとに水で口をすすぐ。この使い分けで両立できます。

Q3. 年をとると歯周病になりやすいというのは本当ですか。

統計上、加齢とともに歯周病を持つ人の割合は明らかに増えます。令和6年の歯科疾患実態調査では、4mm以上の歯周ポケットを持つ人の割合が55歳以上のすべての年齢層で50%を超えています。加齢による免疫機能や組織修復力の緩やかな低下に加え、長年蓄積した歯垢や歯石、服用薬による口腔乾燥などが重なることが背景にあります。ただし、年齢そのものは変えられませんが、日々のケアと定期的な専門的清掃によって進行を抑えることは十分に可能です。

Q4. 口の渇きが強いのですが、飲んでいる薬のせいでしょうか。

その可能性はあります。血圧の薬、利尿薬、睡眠薬、抗アレルギー薬など、口の渇きを副作用として持つ薬は多く、複数を服用している場合は影響が重なります。ただし猛暑による脱水との区別は自己判断が難しいため、歯科受診の際にお薬手帳を持参し、服用状況をお伝えください。処方の変更が必要かどうかは処方医の判断となります。自己判断で薬を減らしたり中止したりすることは避けてください。

Q5. 歯ぐきから血が出ますが、痛くないので様子を見ています。

出血は炎症が起きているサインですので、痛みがなくても様子見はおすすめできません。歯周病は初期に自覚症状がほとんどなく、痛みが出た時点ではすでに進行していることが大半です。逆に言えば、出血の段階で対応できれば、比較的軽い処置で改善が見込めます。なお、歯周病の基本的な検査と治療は保険診療の適応となります。

Q6. 夏バテで食欲がなく、麺類ばかりです。歯には影響しますか。

影響します。歯ぐきはコラーゲンを主体とした組織で、その材料はたんぱく質とビタミンCです。炭水化物に偏った食事が続くと、歯ぐきの修復力と免疫細胞をつくる力が落ちます。冷たい麺に卵や豆腐、ツナ、蒸し鶏などを一品加えるだけでも状況は変わりますので、無理のない範囲で意識してみてください。

まとめ ―― 夏を越えた口が、その先の10年を左右する

猛暑による夏バテは、唾液の減少と体の抵抗力の低下という2つの経路から、むし歯と歯周病のリスクを押し上げます。年齢を重ねた方ほど、この影響は大きく、そして残りやすくなります。

一方で、対策そのものは特別なものではありません。水をこまめに飲む。甘い飲み物をちびちび飲まない。疲れていても夜のケアは省かない。たんぱく質を一品足す。そして、症状が出る前に歯科で診てもらう。この積み重ねが、夏の消耗を口の中に残さないための最も確実な方法です。

8020達成者が6割を超えたという令和6年の調査結果は、予防に取り組んだ人が着実に成果を得ていることを示しています。厳しい夏だからこそ、ご自身とご家族のお口の状態に、少しだけ意識を向けてみてください。


参考文献・出典


この記事の監修者

立原 正仁(医療法人社団 春風会 立原歯科医院 院長/歯科医師)

平成3年 日本大学歯学部卒業、同年 歯科医師国家試験合格。間宮歯科医院勤務を経て、平成4年に立原歯科医院を開設(日立市諏訪町)。平成7年より現在地の日立市城南町に移転し、現在に至る。

【所属学会・認定】 特定非営利活動法人 日本臨床歯周病学会 認定医/日本糖尿病協会 歯科医師登録医/JIADS CLUB 会員/日本ヘルスケア歯科研究会 会員/茨城インプラント研究会 会員

公開日:2026年7月31日 / 最終更新日:2026年7月31日


運営者情報:医療法人社団 春風会 立原歯科医院

〒317-0077 茨城県日立市城南町3-1-33 TEL:0294-22-0777 診療時間:月・火・水・金 9:30-13:00/14:30-18:30、土 9:30-13:00/14:30-17:30 休診日:木曜・日曜・祝日(祝日のある週は木曜も診療) アクセス:小平会館入口バス停より徒歩1分/JR常磐線 日立駅より車で約8分(駐車場10台) 公式サイト:https://www.tachihara-shika.com

むし歯・歯周病・インプラント・入れ歯・お子様の歯の予防など、お口のことでお困りのことがございましたら、お気軽にご相談ください。


※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の診断・治療方針を示すものではありません。症状や治療の適応には個人差があります。実際の治療は歯科医師の診察のうえで決定されます。

※記載している公的機関の制度・窓口・受付時間等は2026年7月時点の情報です。最新の内容は各機関の公式サイトでご確認ください。

※服用中のお薬に関する判断は、必ず処方した医師にご相談ください。自己判断での増減・中止は行わないでください。

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